夏山定着合宿報告

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夏山定着合宿報告
参加者   安倍(3年、C.L.)、阪上(2年、S.L.)、市丸(2年)、小川(1年)
場   所:穂高・涸沢B.C.
期   間:7/22〜8/3
目   的:  全体目標    リーダーシップ・メンバーシップの確立
                                一人一人が主体性を持って取り組む
            学年別目的 1年生…雪上技術の習得、生活技術の習得、ビバークの経験をする
                          2年生…岩稜縦走のリード、登攀技術の向上、穂高周辺の概念把握 
                          3年生…パーティー全体の安全を確保する判断力の養成、登攀技術の向上、
                                            積雪期を視野に入れた穂高周辺の偵察

行動記録
7/22  (曇り後雨) 入山
6:10上高地→7:05明神→8:10徳沢→9:20横尾10:00→
11:15本谷橋 (右俣偵察隊…安倍、阪上)→13:05二股の少し先の滝→14:20本谷橋→17:00涸沢(B.C.)
                (Wボッカ隊…市丸、小川)→14:00涸沢→16:00本谷橋→18:30涸沢

博多駅でスイカ3つ、パイナップル1つの差し入れをいただき、非人道的な重さの
ザックを背に上高地を出発。市丸はザックに入りきらないようで頭の上にも荷物をの
せている。あまりの重さに背骨が変形しかけるころに横尾に到着。ここでスイカを一
つ食べる。ケルンにお参りをするが、このあたり護岸工事がすすんでいてケルンもい
つまで残るのだろうか。本谷橋につくころには疲労困ぱい(特に安倍)でフルボッカ
での入山はきつすぎるので、偵察隊の登攀具とスイカを残りの二人にWボッカで上げ
てもらう事にする。偵察は疲れ果てていたのとザイル等を持ってきていなかったので
中途半端で終わってしまう。涸沢への登りの途中どしゃ降りとなる。涸沢につくと苦
労して上げた特大のスイカ(推定10キロ)が割れていた。


7/23 (晴後曇り)  雪訓(ピッケルストップ)
4:00起床4:45発→5:30雪訓場14:15→14:40 B.C.

雪訓場は5,6のコル直下。2年前と比べて格段に雪が少ない。雪が柔らかく小川の
ピッケルストップがなかなかうまくいかなかった。安倍が10kgくらいの荷物を背負っ
てピッケルストップをやるが仰向け逆さがどうしてもうまくいかなかった。それにし
てもB.C.から雪訓場まで近い。


7/24  (ガス) 北穂東稜
3:30起床4:10発→5:50東稜に突き上げる→7:20大コル→7:55北
穂→9:50涸沢岳→11:10 B.C.

期待された展望はゼロ。稜線上はずっとガスだった。北穂〜涸沢岳間はイメージして
いたよりもずっと危険で鎖がなかったら大変だと思った。滝谷C沢左俣のほんの入り
口のところだけを偵察(というより覗いてみた)。


7/25 (曇り) 雪訓(確保)
4:00起床4:45発→5:45雪訓場13:30→14:10 B.C.

雪訓場まで小川はアイゼンで行く。コンテのループ突き刺しに難あり。


7/26 (快晴) 前穂北尾根
3:30起床4:10発→5:10 5,6のコル→7:15 3,4のコル→10:
10前穂→11:55奥穂→13:35 B.C.

ピッケルは持たずに行く。5,6のコルまではガレ場をつめていく。4峰まではノー
ザイル。4峰もザイルをつけずに登っているとルートが違うのか浮き石が多く傾斜の
強いところに出てしまい、落石をくらいそうになりあわててザイルをつけてスタカッ
トで登る。3峰もルートを間違えたりしててこずり時間がかかった。3峰を越えると前
穂は目と鼻の先であった。前穂頂上は人で埋め尽くされていた。吊尾根では小川がバ
テ気味。


7/27 (晴後曇り時々雨) 4峰東南面
3:30起床4:20発→5:20 5,6のコル→11:45取付→
15:00 明大ルート終了(市丸−阪上)
15:30 L字洞穴ルート終了(安倍−小川)
→17:00 5,6のコル→17:50 B.C.

安倍が一人で奥又白本谷に入り偵察していると特大の落石(直径4mくらいあったと
思う)が10m横をすさまじい轟音とともに転がっていった。すっかりびびってしま
い少しでも早く奥又白の雪渓を抜けたいのと落石の落ちてきた場所とは離れて進んだ
ため本来つめるべきC沢とは違うガレた沢(というより滝に近かった)を登る。だんだ
ん傾斜が強くなってきてスタカットに切り替えて3ピッチくらい行った所で比較的平
坦な場所に出る。そこは4峰正面壁の取付である事が判明。踏み跡らしきものをたど
りやっとC沢に出る。資料のチョックストーンのある滝もある。滝を巻くため右の壁
を登っていると落石が阪上に命中したのか叫び声が聞こえたが当たったのはザックで
大事には至らなかった。C沢に戻り雪渓をつめるが傾斜が強く雪も堅くキックステッ
プで登るのは結構大変だった。ようやく取付きにつくと何とお昼前。前穂東壁に登っ
ているパーティーがいた。L字洞穴はA1のピッチで、ピンが抜けていたりハーケンが
浅くて遠いのでかなり苦戦した。


7/28 (雨) 沈殿

昨日から快沈と決めていたが、1日中降ったり止んだりの天気で罪悪感なく寝てすごせた。
明日は岩登りの予定だが天気があまり良くなさそうなのでロングランに行く事にする。
7/29 (ガスのち晴) ロングラン
3:30起床4:10発→5:55白出のコル→6:25奥穂→9:35西穂→10
:45西穂山荘→12:30上高地→18:00B.P.
出発後阪上がポリタンを忘れた事に気づき取りに帰る。西穂まではほとんど問題な
し。思っていたよりいい道だった。ロングラン用の食料がないので上高地で夕方まで
のんびりしてカレーを作って食べて水を満タンにしてB.P.へ行く。B.P.は道路から八
右衛門沢に少し入ったところの土手の上。


7/30 (晴のち曇り時々雨) 続ロングラン
4:30発→12:00頃尾根に突き上げる→16:55縦走路(K2ピーク)→19
:10徳本峠小屋(B.P.)

三本槍沢に入らないように右、右に沢をつめていけば良いと思い込んでいたため枝沢
に入り込んでしまう。間違いと気づいた時には滝をいくつか越えていて下るのは困難
で下から見るかぎり何とか登って行けそうだったので進む事にする。(この時現在地
は把握できていない)どんどん進んでいくと見た目よりも傾斜が強く岩は脆い事この
上ない。ついに行き詰まり進退極まってきた。前と左は垂壁、下るのは不可能、活路
は右手の樹林帯しかない。Fixロープを張るため安倍が登って行くが樹林帯のほうに
トラバースできず正面の壁のほうに行ってしまい落ちる寸前(この時は正直駄目かと
思った)でクラックからはえている枝くらいの細さのブッシュに必死で飛びつきラン
ナーをとって自分でグリップビレイしながらなんとか太い木のところにトラバースで
きた。もう1ピッチ木登りをして尾根に這いずり上がる。そこには悪夢のようなハイ
マツ漕ぎが待っていた。細くきれ落ちた岩まじりの尾根の気が遠くなるくらいのハイ
マツ漕ぎの末ついに縦走路に飛び出す。徳本峠に着きツェルトを小屋の前に張らせて
もらえないかお願いに行き事情を説明すると快く承諾してくださっただけでなく汗と
泥にまみれ小汚い我々を小屋の中に迎えてくださりお茶やお菓子、夕食までごちそう
になった。身も心もぼろぼろの僕にとってこの夜の人の温かさはこの合宿中一番のい
い思い出だった。


7/31 (快晴)  続々ロングラン
4:30発→9:10B.C.

帰幕し今後の事について話し合う。偵察が十分になされていない、無線機が1台しか
ないなどの理由により横尾右俣隊は出さない事にする。また、阪上の希望により4峰
正面壁にも行かない事が決定。4尾根は市丸が行くか迷っているが北穂小屋で情報を
聞く事を条件に行く事に同意する。明日は安倍、市丸で4尾根、阪上、小川で蝶ヶ岳
とする。


8/1  (快晴のちガス) 滝谷第4尾根
2:30起床3:05発→4:30北穂小屋→6:15 4尾根上のコル 6:40→
14:10登攀終了→15:10北穂小屋→17:15 B.C.

朝、小川の膝の調子が思わしくないため雪訓、縦走を優先させたいという意思を尊重
して沈殿させる。北穂小屋の人の話では4尾根は大丈夫との事。C沢左俣を慎重に下
る。雪のかけら一つなくピッケルは全くの無駄ボッカであった。コルにつき登攀準備
をしてコンテで出発。通常より手前からスタカットしていく。岩は堅くハーケンも効
いていて快適。核心部のDカンテは爽快だった。慎重になり過ぎて非常に時間がか
かった。北穂小屋に戻り小屋の人と話していて帰幕が遅くなってしまった。


8/2  (快晴)  雪訓 (試験)
4:00起床4:40発→5:15雪訓場11:55→12:20 B.C.

市丸、小川がエッセンを忘れる。試験は順調に終わった。涸沢でささやかな打ち上げ
をやる。
8/3  (快晴)  下山
5:00起床6:30発→11:20上高地
雲一つない快晴。挫折感に打ちひしがれて屏風岩や前穂東壁を見上げながら下る。
今日から縦走に入る阪上、小川を見送り松本に下山。

夏山定着合宿反省
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○ ルートファインディング力の不足
具体例・・北尾根・4峰東南面のアプローチ・八右衛門沢でのルート選定ミス、道迷い
原因・・・・経験不足、それに伴う実力の不足。慎重さ・冷静さを欠いた判断。直感に頼っていた。
備考・・・・4峰東南面、八右衛門沢については情報が少なかった事もあるが、概念をしっかりと把握できていなかった。
             実力がないぶんを情報収集でカバーすべきだった。
○ リーダーシップ・メンバーシップの欠如
具体例・・パーティーがバラバラになって行動して、リーダーが行動を把握できない事があった。
        (東南面登攀終了後。八右衛門沢で偵察に行ってくると言ったまま帰ってこない。同じく尾根上で
           2年生2人が声の届かないところまで先行、間を開けないよう指示しても守らない)
      リーダーの指示を待たずトップの独断で進む。指示を仰がない。
      4峰正面壁の計画が行えなかった
原因・・・・リーダーの指示が明確でない。リーダーの未熟さ。
         リーダーと2年生との人間関係、信頼関係のまずさ
○ 装備管理の悪さ
具体例・・無線が出発直前になって壊れていることが発覚し、1台しか持っていけなかっ た。
原因・・・・日頃の装備管理の悪さ
備考・・・・無線が1台しかないのにそのまま出発したのは反省すべき点である。
         装備が使える事を確認の上で計画を立てるべきだった。
○ 各学年のパーティーにおける役割が不明確
具体例…2年生がどういう役目をし、どのように動くかが明確でなかったため、
       パーティーとしてうまく機能しなかった。
原因…リーダーの指示が不明確。日頃からそういうことを曖昧にしていた
○ 安全性に対する認識がおかしかった
具体例…スタカットすべき所をノーザイルで行った。ルートとは明らかに違う場所をかまわず登った。
原因…危険に対する感覚が少しずれている。割合足並みのそろったパーティーだったので、おごりがあった。
○ 滝谷で登攀スピードが遅かった
原因…慎重になり過ぎた。プロテクションが多すぎる。無駄な動作が多い。ビレイ点で時間がかかった。
○ 合宿を通じて同じ間違いを繰り返した
具体例…ルート間違い(北尾根、東南面、八右衛門沢)忘れ物(ポリタン、エッセン)
原因…個人の不注意もあるが、気のゆるみがあった事は否めない。行動終了後反省会をやらなかった。
○ テント内が汚い
原因…生活技術の未熟、気の緩み
その他、横尾右俣の偵察が中途半端・計画外のWボッカで1年に負担をかけた・右
俣、蝶ヶ岳の計画が行えなかった等があるが、原因として体力不足、計画の不備、
ガッツの不足が挙げられる。

体質と原因

以上、今合宿で特に目に付いた反省を挙げたがこれらの反省点は今回に限った事ではなく、
我々が新年度をスタートしてから抱えていた体質に根本的な原因があると思われる。
以下にその体質とそれを生み出す原因を挙げる。

○ リーダー・メンバーの関係
以前はどうか分からないが、少なくとも安倍が部にいる間は普段の活動、合宿計画、
部会の運営など全てリーダーが行ない、下級生はそれについて承諾する程度しか関
わっていなかった。極端に言えばガイドとお客の関係に近いものがあった。このシス
テムの盲点は「ガイド」が適切でない場合であり、今回はまさにそのケースだった。

○ 2,3年生の意識の低さ
上級生に部をよくしていこうと真剣に考え、積極的に行動するという姿勢があまり見
られなかった。部会は前の週の表面的な反省と次の活動の連絡の場であり、研究発表
も形式的で場当たり的なものだった。また、合宿における反省も、反省会のための反
省に過ぎず、同じ過ちを繰り返した。

○ リーダーの未熟さ
今回のような結果をもたらした一番の要因に他ならない。このようなリーダーが生ま
れた原因を資質の無さで片づければそれまでだが、前述の事にもその要因があると思
われる。主体性を持たず、リーダーについていくだけのメンバーからは適切なリー
ダーは生まれにくいように思う。また、リーダー自身も他のメンバーからの突き上げ
が無い事によって進歩があまりなかった。

これらを生み出す第一の原因は「議論の無さ」である。議論が無い事によって生じる
様々な弊害はここでは省略するが、このことが前述のような関係を生み出し、意識の
低下を招き、未熟なリーダーを生み出すという悪循環を招いているように感じる。


対策

以上の体質を改善するための対策を挙げる。

@:まず部会を議論の場にする事からはじめる。毎回何らかのテーマをもうけ、それ
  についての予備知識をあらかじめ持っておき、現状と対比して自分たちに欠けている
  ものについてお互いが納得するまで意見交換をする。その結果に基づいて週末の活動
  を決定する。(目的意識を持った活動、例えば新しい技術を試したりなど)また、活
  動の目的と課題をノートなどに記しておく。

A:活動においては、まず一人一人が活動の目的と課題を明確に頭に入れて、その課
  題を解決出来るように真剣に取り組む。

B:次の部会までに、活動の記録と成果(技術的な課題をこなせたか、目的は達成で
  きたか、それによる効果は)をノートにまとめ、反省を挙げていく。この反省を基に
  今後の方針を決める。

C:現役内だけでは解決できない問題はOBに積極的に質問する。

    以上@〜Cを1つの流れで行なう事によって部員一人一人が自ら考える、方向性を持った活動にしていきたい。
 

まずは、この形を忠実に守る事から始めて、議論するクセを持つようにしたい。今後
のテーマは冬山のことと岩登りの確保技術についてやっていこうと思う。


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