2003(平成15)年度夏山定着合宿報告              文責:高田
期間:2003年8月7日から同19日(実動10日、沈殿3日)
山域:穂高岳(涸沢ベース)
参加者:高田広崇(3年、C.L.、装備)、船越陽(4年、S.L.)、松岡沙紀子(2年、食糧、医療)、桜木理(1年)


行動記録: (到着時刻 場所名 出発時刻

8月6日(移動日)
離福。博多駅には中村先生ご夫妻が見送りに来てくださる。ひかり386にて新大阪まで。大阪から急行ちくま。大阪では、望月さんが見送りに。毎回ありがとうございます。さらに、岐阜では2分間の停車にもかかわらず、安倍さん登場。懐かしい「走り」、ありがとうございました。車中泊。

8月7日
⇒松本5:05⇒6:10上高地6:39→7:26明神7:34→8:24徳沢8:38→9:32横尾9:47→11:03本谷橋11:23→13:30涸沢(B.C.)

4:14松本着。タクシーが一人3000円で上高地まで行ってくれるとのことなので、乗車。1時間強で上高地着。心なしか登山者は少なめ。タクシーの運転手さんが、今年は冷夏で客が少ないと言っていた。
曇り空の中、出発。ほぼ1時間ずつで横尾まで。横尾の岩小屋近くの永松さんのケルンに手を合わせる。本谷橋を出て間もなく、桜木のコンタクトが外れ、入らなくなる。ここでパーティーが船越、松岡と高田、桜木にわかれそのまま涸沢入り。
涸沢について早々、雨が降り出し、急いでテントを張る。高田は一昨年を思い出していた。

8月8日
4:00起床 5:05出発→5:40雪訓場12:50→13:05B.C.帰幕

一日、雨は降ったり止んだり。雪訓場は前穂北尾根XYのコル下の雪渓。レーンを作り、いよいよ雪訓開始。まずは、ピッケルストップ。下のバケツではセルフビレーをとった船越が構える。教え役は主に松岡。桜木は基本姿勢で苦労していた。
9:00ごろから1時間ほど雨が強くなりツェルト待機をした。
スタカットでは、船越は最終ビレー役に回る。この日に、二人ともスタカットまで終了。
テントに、明日は台風が来ると小屋の人が警告に来る。幕営は10張りほど。貸しテントはたたまれていた。
18時ごろから雨が強くなる。明日は沈殿?

8月9日
5:00起床 5:35沈殿決定

この台風は風より雨がすごかった。天気予報も雨を伝えていた。
19時過ぎ就寝。深夜2時ごろも降っていた。

8月10日
4:00起床 4:43出発→5:45XYのコル6:04→6:37WXのコル→7:46VWのコル→10:28TUのコル→10:35前穂高岳山頂11:21→紀美子平11:32→12:53穂高岳山荘13:10→14:17B.C.帰幕

晴れている。薄明るい中、出発。XYのコルへ向かう道にはすでに人がいる。追いつく直前でXYのコルに到着。ここでコンテ開始。彼らより先に出発すべく、急ぐ。3パーティー取り付いているようで、僕らは2番手。XYのコルから見る奥又の池は予想とはかなり違っていた。
コンテオーダーは、高田−桜木、松岡−船越。X峰はあっさり越えるが、W峰は、高田らは基部にあった奥又側への矢印の方へ進み、1ピッチ、登攀。松岡らは基部を涸沢側に巻いて直上。
VWのコルで順番待ち15分ほど。3ピッチ登攀する。1ピッチ目は左上へ進み、後、上へ。このピッチは予定通り、船越−松岡を先にプルージックで通過させ、次のピッチのリードをしてもらう。その間に桜木が登る。しかし、これ以降はパーティー別に登ったほうが早そうだ、ということになり、そうする。2ピッチ目は船越−松岡が先行。直上して、チムニーの基部へ。
3ピッチ目も船越−松岡が先行。チムニーの左側の壁を登り、不安定に見える岩を越えて、さらに登り、シュリンゲが何本かかかった岩でビレー。山靴でも、なかなか快適。その後は稜線上を行く。
U峰の登りにおいて、涸沢側を巻いて直上したが、もろかった。U峰の下りはクライムダウン。
前穂山頂は少々ガス。大休止となる。
途中で1本入れて奥穂の山頂に着くも、誰かの一言で休憩はなしとなり、穂高岳山荘へ向かう。しかし、山荘でも彼の「人が多い」という言葉で、そそくさと撤収となる。ザイテングラード、人多し。
帰幕したころから曇ってくる。

8月11日
3:00起床 3:50出発→東稜最低コル5:28→5:35コンテ開始場所5:55→懸垂地点7:04→7:45北穂高小屋8:46→9:01B沢入り口9:10→(11:30撤収)→12:20北穂高小屋12:46→14:07B.C.帰幕

曇り空で上部はガスだが、東稜は大丈夫だろうと出かける。東稜の取り付きは一般ルートをかなり上まで行ってから分岐する。危うく最低コルよりもっと下の、樹林帯に突っ込むところだった。最低コルに着くころには完全にガスで、霧雨のように水滴が顔に飛んでくる。みな雨具装着。
松岡−船越、高田−桜木のオーダー。基本的に稜線沿いを行く。2回ほどビレーの必要があった(ゴジラの背含む)が、やはり一昨年同様あっさり懸垂点に到着。岩がぬれていて難しそうなので、松岡隊は懸垂下降。しかし、トップで降りた船越によると、クライムダウン可能とのことなので、高田隊は桜木から先にクライムダウン。
降りきったところで両隊ともザイルをたたむ。後は適当に稜に近いところを進む。
北穂小屋に着いても霧雨は止まず、また、今日は人が多く、荷物の置き場に困る。しばらく様子を見ることにして、小屋で待機。
協議の結果、岩がぬれていて、今日は登攀はまず無理だろうが、明日以降のためにクラック尾根取り付きまで偵察に行こうということになり、上級生3人で出かける。必要装備以外は桜木にあずける。縦走路を行くと程無く、少し離れた岩に「B沢入り口」と書いてある。そこでハーネスを着け、B沢を下る。落石や涸滝のせいで慎重になる。1時間ほど下ったところで、クライムダウンは不可能と思われる涸滝に出くわし、ちょうどそこが「赤茶けたバンド」で、リングも1つあったので、そこが取り付きに通じる道と思った。その少し下で、クロモリをアンカーにしてザイルを出し、高田が偵察に行く。
10mほど行くと、ハーケンが何本か見え、ルートの途中に出たような印象を持った。遠くに変な形の岩が見える。そこでビレーをとり、船越が来る。松岡はアンカーで待機。さらに高田が偵察に行くも、クラック尾根らしきルートは現れず、ガスなのでまわりも見えず、崩壊により死にかけたりもし、11:30撤収開始。結局、クラック尾根の取り付きはわからずじまい。ただ、適当にハーケンはあった。
ザイルを出したころやってきたガイド氏によると、現在は旧メガネのコルから登るパーティーもいるらしい。
北穂小屋で桜木と合流し、帰幕開始。南稜の上がり口あたりからガスが晴れる。夕方には奥穂が見えていたが、夜中目が覚めると、すごい風雨だった。情報で、明日は雨らしいので、登攀を視野に入れつつ雪訓準備をしておく。

8月12日
4:00起床 9:43出発→10:16雪訓場15:08→15:25B.C.帰幕

起きると、やはり雨。かなりひどいので、待機する。9:00、小雨になってきたので、出発決定。雪訓カッパを着て出発するも、雨は止んでいた。しかし、曇りとあって、寒い。
今日はコンテから。今年もループ突き刺しは止まっている。今年は全体的にスピードが遅いとは思う。傾斜が緩いのか?
ピッケルストップの試験まで終了。二人とも、仰向け逆さに苦戦していた。テントに着いたころから晴れ間がのぞく。明日は晴れそうなので、登攀。クラック尾根は取り付きにたどり着けるか自信がなかったので、ドーム中央稜に変更する。桜木はテントキーパー。

8月13日
2:30起床 3:17出発→南稜分岐5:15→6:37取り付き7:03→10:36終了点11:27→南稜分岐11:46→(12:25撤収)→13:14北穂山頂13:37→14:45B.C.帰幕

予測どおりの天気。今日のメンバーは船越、高田、松岡で、桜木に見送られてヘッドランプを点け出発。やはり、今日登攀する人は多いようだ。稜線に出ると、かなり寒い。放射冷却のうえ、風まである。
取り付きへの道はいたって簡単。縦走路からドームを回りこむように下り、トラバースと下降を交互にする感じですすむと、3尾根の上部に懸垂点が設置してある。そこから懸垂1ピッチ。ルート図とは違い、そのまま真下に降りたが、25mぎりぎり。下降地点から上がり気味にトラバースして、取り付き点到着。登攀の用意していると、社会人の方が2名来られた。4尾根であろうか、C沢左俣を下降する人が見えた。
本日は、高田トップ。1ピッチ目は目の前の凹角を登り、凹角がチムニーになるので、左側のカンテに移り、上部で岩の割れ目を抜けるというもの。チムニーはハーケンがあるが、入ったら抜けられそうにない。しかし、しょっぱなからなかなか渋い。2ピッチ目はカンテを登り、最後にフェースに移って、バンドに上がる。このフェースの1手がトップには厳しかった。3ピッチ目はさすがT級だけのことはある。コンテで十分。しかし、ビレー点がどこなのか、迷った。稜沿いに行くなら、ちょうどCの字に沿って進む感じで、3つ目の凹角。4ピッチ目は地震で変わったのでは、と思ってしまった。はじめは凹角を順調に進む。やがて、凹角はチムニーになり、かなり尖った舌のようなチョックストーンがはまっている。ここの乗っ越しが渋かった。しかも、ピンがない。ラスト、5ピッチ目は凹角を登る。ルート図には右のフェースに移るよう書かれているが、その必要はなく見える。だが、結構渋い。
登攀スピードが遅く、後ろのパーティーには迷惑をかけてしまった。
ドームの頭で休憩。まったくいい天気。
松岡は南稜で先に帰幕。4尾根メンバーの船越、高田はC沢の偵察に向かう。時々ガスが湧いてくる。C沢左俣は上部も雪はなく、涸滝は相当多いが、偵察に行った範囲は全て右側をクライムダウン可能。あとの問題は、右俣への道を見つけることができるかだけだろう。
偵察からの帰り道、クラック尾根らしきルートを登っているパーティーが見えたので、北穂の山頂へ行ってみるが、クライマーには会えず。

8月14日
4:00起床 10:11出発→10:50雪訓場15:14→15:30B.C.帰幕

起きると、雨。しばらく待機するが、止むことはない。雪訓はできそうなほどに弱まったので出発する。レーンの様子がかなり変わっていた。雪がかなり解け、岩がところどころ露出している。危ないかと思ったが、岩を避けるようにレーンを整備しなおす。
本日はスタカットの試験から開始する。アンザイレンの手間を考え、松岡のスタカットの試験を全部し、その後、桜木のスタカット、松岡のコンテ、桜木のコンテの順で行った。桜木は制動がうまくいってないことが多かった。松岡はスタンディングアックスビレーと府岳連(倒れ込み)、桜木はループ突き刺しに苦戦していた。
最終ビレーヤーは寒そうだ。
桜木のコンテのとき、失敗して、落ち役の船越がかなり滑り、岩に腰をぶつける。レーンの軌道を修正する。
天候も手伝って、無事雪訓試験が終了する。松岡は1年ぶりの課題終了。
夜は雨。明日、明後日はそこまで悪くもなくよくもないような天気らしい。予備日を2日使っているので、優先順位に従い、ロングランに出ることにする。

8月15日
3:30起床 4:37出発→南稜分岐6:23→8:08穂高岳山荘8:21→奥穂高岳→8:57ジャンダルム→天狗のコル10:45→12:47西穂高岳13:04→14:11西穂山荘14:29→16:30焼岳小屋→焼岳展望台→焼岳小屋→17:30ビバーク地(B.P.)

雨が降る中、出発。稜線に出たころには小雨だが、ガスが濃く、滝谷側からの風が強い。風を避けられるところで休憩をとる。涸沢岳にさしかかったころ、滝谷側は晴れたりガスったり。
奥穂よりいよいよ西穂への稜線に進む。ジャンダルムに登ると、一時ガスが晴れ、今日の目的地である焼岳までがきれいに見えた。奥穂−西穂間は去年来たときよりもルートを示すマークが増え、危険ではあるがあまり迷う感じではなかった。途中、福大の縦走隊2名に偶然出会い、驚いた。
奥穂−西穂間は予想通りに4時間。西穂は薄いガスに包まれている。ガスを通して日が照り、暑い。西穂山荘−焼岳小屋の道は、かなりひどいぬかるみ。昨日の雨のせいもあるだろうが、道の8割がぬかるんでいる。特にきつい箇所はない。
焼岳小屋は大きな岩の横に建っているこじんまりした小屋だ。水はなく、雨水なら少し分けられるとのこと。今日は1組泊まるようだ。小屋の到着が16時を越えていたが、ひとまず展望台(片道10分)に足を伸ばす。ガスで焼岳はまったく見えず。所々、水蒸気だろう、白い煙が出ている。これが無色無臭になると危ないとか。協議の結果、焼岳には明日行くことに。水をいただきに行き、ビバークする旨を話すと、トイレは小屋のを使ってくれとのこと。
ビバーク地は小屋から121歩(岩に書いてあった)行った草地。ツェルトを張れるような木はない。なんと、ここは携帯が通じる。靴擦れのせいか、桜木の元気がなかった。ツェルトは2張り。
雨が降りそうで気をもんでいたが、降らず、また、標高が低いのであまり寒くはなく、どちらのツェルトも完全装備には至らなかったようだ。しかし、逆に蚊(?)が多く、悩まされた。

8月16日
4:45出発→5:35焼岳5:50→6:30B.P.6:53→焼岳登山口8:03→8:35河童橋8:53→10:40岳沢ヒュッテ10:55→12:52紀美子平12:58→14:14奥穂高岳14:22→14:43穂高岳山荘14:53→16:03B.C.帰幕

いい天気。登攀すればよかったと悔やむ。まずは空身で焼岳アタック。思っていた以上に時間がかかった。火口はかなり大きい。快晴で、槍まで良く見える。B.P.に戻り、出発準備。上高地まで、なかなか下りやすい道だった。西穂まで一緒だった人が登ってきて驚く。このルートを登る人は思った以上に多かった。
上高地は相変わらず、観光客でいっぱいだ。喧騒の上高地を後にして、再び登り。太陽が暑い。重太郎新道はかなりきつく、このあたりから皆さんかなりお疲れ。ただ、上高地から一気に奥穂に登るということで、達成感はかなりあったようだ。奥穂に上がると、少々ガス。
ザイテングラードを下り、ようやくロングラン終了。みな、足に何らかのダメージを被っていた。
福大登攀隊はどこだろう?涸沢にいるはずだが。松岡は去年のこともあるので、休養の意味で、明日は4尾根を狙う。

8月17日
3:00起床 3:50出発→6:00北穂小屋8:45→10:25B.C.帰幕

雨。雪訓は残ってないので、一応、稜線まで上がってみることにする。船越、高田の2名で出発。松岡、桜木はテントキーパー。やはり、疲れているのか、登りがしんどい。
雨具を脱いで、小屋で待機。ガス時々雨。小屋も今日は閑散としていた。7:30を過ぎたころにはほぼ貸し切り状態。
8:45、天候の回復はないと判断、撤収開始。霧雨状態。
涸沢小屋のすぐ上で、北九大の安徳君に出会う。九工大との合同合宿の最中。今日は南岳まで行くそうだ。
雨は止まず、時々強く降る。やはり、共同装備で傘がいるのでは?追加の野営申請に行く。

8月18日
4:00起床 8:45沈殿決定

昨日からの雨。待機してみるが、片時も止まず、沈殿決定。今後の天候を考えて、稜線まで行っても無駄であろうと思い、行かなかった。今年は外れ年?

8月19日
4:00起床 5:35出発→6:30本谷橋6:40→7:30横尾7:40→8:30徳沢8:39→9:28明神9:38→10:27上高地11:33⇒12:58松本

雨。天気予報も、昼までは雨を告げており、止んでも、一昨日からの雨では乾くのも難しいだろうと思い、下山することにする。「雨の下山は気持ちのいいものではない。」
横尾手前では、踝まで水につかる。人は少な目。徳沢手前で雨は止み、雨具を脱ぐと、また降ってくる。しかし、明神からやっと雨は止んだ。途中、穂高を仰ぎ見ると、完全にガスに包まれていた。上高地も少しガス。行きのタクシーの運転手さんに迎えに来てもらい、帰路に着く。帰りは2500円/1人。松本は晴。たくまが火曜定休だと思っていたが、月曜だった。ホッ。縦走隊はこの日のうちに準備を済ませる。

翌日、松岡と桜木は南ア縦走へのため甲府へ行き、船越は18きっぷで福岡を目指し、高田は文登研のため富山へ向かった。

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