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2003(平成15)年度春山合宿報告1 (槍ヶ岳 中崎尾根)          文責:高田
○期間:2004年3月18日から同3月22日(実動4日、移動1日)
○山域:北アルプス槍ヶ岳(中崎尾根)
○参加者:高田広崇(3年、C.L.、装備)、松岡沙紀子(2年、食糧、医療)
○行動記録:
3月18日 (移動日)
博多16:25(のぞみ28)⇒19:48名古屋⇒岐阜⇒
博多駅にはOB事務局の吉田さんが来てくださり、最も軽く、しかし最も有用な差し入れをくださる。出発時刻を直前に変更してすみませんでした。
最終列車で高山入り。高山駅前でビバーク。春というのに(?)、相当寒い。

3月19日 快晴
⇒0:25高山5:55(タクシー)⇒新穂高温泉8:11→10:39白出小屋→滝谷避難小屋14:10→15:54槍平(T.S.)

郊外は、一面雪だ。話によると、昨日降ったらしい。
新穂高温泉の駐車場のゲートのところで出発用意。近くの木の根元に不用品をデポ。
船越・大山隊に遅れること35分でこっちも出発。一面雪だが、ワカンは不要。天気も良く、一箇所、砂防提を越える以外は、ひたすら林道を歩く。穂高平のショートカットは、いつの間にか通り過ぎていた。穂高平ではダイヤモンドダストを見る。登山道に入ってから、赤布を打ち足しながら進む。本当に小さなアップダウンを繰り返す樹林帯で、トレースがないと迷いそうだ。ブドウ谷を越えたところで、高田が足を滑らせ、2mほど滑落する。雪面が堅く、しっかりと蹴り込む必要があった。チビ谷は壮絶だ。デブリが幅30mほどの谷を埋め尽くしており、渡るのに難儀した。渡ってしばらくして、川のほうにトレースを見つけ、夏道を外れる。滝谷避難小屋からは谷底を進む。ここも側面の沢からのデブリが多く、きつい。と、そこへ「エーイ、エイ」とコールが。右の方に、2つの人影。先輩たちが偵察をしているようだ。
傾斜がなくなると、小屋が見えてきた。ほぼ、予定通りに一日目の行程終了。地図を見て、中崎尾根へ上がる尾根の見当をつけておく。他には誰もいない。

3月20日 曇→雪→快晴 4:00起床
T.S.6:00→10:23中崎尾根に達す→(偵察)→14:00中崎尾根2500m(B.C.)

昨日見当をつけておいた尾根に取り付く。有名どころの尾根にしては取り付きに赤布が見当たらない。左の沢の方から取り付く。尾根の末端は急で、しかも、踏み込むたびに足が深くはまり、進まない。荷を置いてトレース付けをすることにする。
標高差にして、30mほど登ったろうか、そのあたりで傾斜はまあ緩み、フルボッカでも動けるようになった。はまらないし。しかし、今度は、あまりにも雪が硬いので、アイゼンを履くことにする。ここからはけっこう細い。時々赤布を打つ。時々、ほんのわずかにトレースが顔を出す。もう少しで中崎尾根というところで、ポケットから赤布を出そうとした高田は、一緒に入っていた時計を落としてしまう。時計は、クラストした雪の上を一直線に谷に滑っていった。
中崎尾根とのジャンクションピークの直前で右にトラバースして、中崎尾根に達する。このあたりからついに雪が降り始める。視界が悪いというほどの事はないが。小さなアップダウンを繰り返し、進む。
P2388の手前で、不意に人2人に出くわす。少しびっくりした。聞けば、東洋大で、東鎌を縦走してきたらしい。雪庇は鹿大のいうようにジグザグに出ているが、そう大きくはないようだ。今日の目的地、2500mの台地に上がったが、一見、巨大な雪庇に見える。大木があり、その横には天場にした跡がある。ザイルを使っての偵察の結果、安全とみた。軽く整地して幕営。このころ、雪も止み、快晴に。槍が良く見える。
しかし、高田は夜中に不審な音を聞き、眠れぬ夜となる。どうやら、雪が締まっていく音らしいが…。

3月21日 快晴 3:00起床
B.C.4:50→J.P.→6:40千丈沢乗越7:00→9:05槍ヶ岳山荘9:35→10:30槍ヶ岳10:55→槍ヶ岳山荘12:55→千丈沢乗越13:40→15:21B.C.

暗い中出発する。20分くらい歩いたところで岩の基部に付く。確かに、右はルンゼ状雪壁、左は岩になっている。ここでザイルを出し、アンザイレン。30mほど雪壁を登ると、岩の方に支点が見える。そこでピッチを切る。支点はお世辞にも効いてるとは言い難い…。2ピッチ目は岩と雪壁を使う。ぼろぼろのFixが走っている。20mほどで支点があったが、ランナーだけとり、上まで上がり、反対側の斜面にシャフトを刺して支点にした。ここからは天場が良く見える。雪庇は心配するほど、発達していない。
松岡が上がってきてからコンテ。そこから超細いナイフエッジ。10mほどだが、本当に靴の幅しかない。
ナイフエッジを抜けると、でかい岩峰が姿を現した。しかし、岩峰の基部を巻くようになだらかなスロープが走っているではないか。赤旗まで立っている。そこを歩くと、千丈沢乗越へはすぐ。拍子抜けした。ザイルを出してからわずか1時間半、3ピッチ。
どの付く快晴の千丈沢乗越で休憩。東洋大のものか、わずかに足跡が見える。
ここから左の稜線に近いところを進み、左に見える岩峰の基部を巻くように登る。そこからまた稜線に近いところを登る。飛騨沢を見ると、スキーヤーか、人が3人ほどいる。
肩の小屋もほとんど雪に埋まっている。人はおらず、しんとしている。先輩たちもまだのようだ。遠くに富士山が望める。槍の穂先は雪をまとってはいるが、ほとんど岩が露出している。不用品を小屋の前において、山頂に向かう。
夏道どおりに進む。真ん中あたりから3ピッチ、スタカット。
槍の山頂は雪におおわれている。風も弱く、申し分のない天気だ。360度の白い山々。握手をして、写真を撮る。
下山は、2ピッチ懸垂し、あとは2ピッチのスタカット。こちらもほぼ夏道どおり。途中で主稜線上に動くものを発見。2人?先輩たちだろうか、コールするが、返答聞こえず。
帰りは行きのトレースをたどる。西鎌の入り口からは、けっこう急な斜面で苦戦した。下りのほうがおっかない。千丈沢乗越を越え、ナイフエッジを越え、問題は懸垂である。上の支点まで、スタカットでクライムダウン。支点はどのハーケンもあやしい感じ。強引に一本打ち足し、残置の一本と支点を作る。そこから次の支点まで懸垂し、架け替える。こっちも一本打ち足し、二本での支点。(南岳隊がこの支点を使ったところ、残置のほうが抜けたそう…)下りながら見てみると、ランニング支点が岩のほうに何個か見えた。登りは暗くて、あまり発見できなかったらしい。
ザイルをたたみ、歩くと程無くベース。予定よりは早かった。晴れているので、ザイルなどを干す。

3月22日 曇→雪 4:00起床
T.S.6:15→中崎尾根より分岐8:05→9:04槍平9:24→滝谷避難小屋→白出小屋12:28→14:32新穂高温泉

起床時は曇だったのが、出発するころには小雪となる。
アイゼンを履いて出発。尾根は、本当にうっすらだが、トレースがある。どうも、2系統あるように思うが…。下りは早く、2ピッチで中崎尾根から外れる。雪は強くなり、視界は200mほどか。
ここからは急な斜面。体力的にはきつくないが、深い足跡に足を取られ、苦労する。いっそ、トレースのないところを歩くほうが楽である。一回の休憩で槍平。人はいない。
来た道を進むが、かなり雪が降っているので、あまり谷底は通らないようにした。
避難小屋からも来た道、川沿いを歩く。チビ谷を渡ったところで、上に登り、夏道に合流。チビ谷のデブリは通過に苦労した。ここからは赤布だけが頼りと思っていたが、幸い、トレースがまだ残っていた。このあたりでは、アイゼン団子がひどい。林道に達して、まずはホッとする。雪は相変わらずだが、ゴールは近いと、スピードが出る。白出の小屋でアイゼンを外す。ワカンはついに使わなかった。
穂高平で松岡が腹痛を訴えるが、もう少しと気合で進む。滝谷に登るという2人組に出会う。
ようやくゲートが見える。デポを回収して、新穂高温泉の観光案内所に転がり込む。合宿終了。
16:00のバスで松本へ。松本の飲み屋で打ち上げとなった。
松本。たくまは定休だし、なぜか塩井の湯も閉まっているしで、最後はとんだ締めくくりとなった。


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一応、春で僕の山岳部としての活動は一区切りである。(おそらく、隠居はできないだろうが。)
巻頭言にも書いたとおり、槍は僕の一番好きな山である。冬は、あの通り、失敗に終わってしまったので、まずは確実なところを狙い、中崎尾根とした。
冬に中崎尾根は多いが、意外に春の記録は少なかった。

冬に失敗しただけに、無事、成功したことはうれしい。春らしい好天で、予定通りにスムーズにいった。天候・トレースに助けられての成功であったが、成功は成功と喜んでいいと思う。反省点は成功・失敗とは別だ。特に大きな事故もなく、ラッセルがなかったので、体力勝負にならなかったのも成功要素として挙がると思う。
また、ブドウ谷など、今回はデブリ帯を通過することが多かったが、初めてで、しかも、全く予期していなかった。いい経験ではあったが、資料だけでなく、人に聞くなど、もっと下調べをしておくべきだった。ザイルの使い方にしても、時間を気にするあまり、おろそかになっている部分があった。焦らず、的確な操作をしたいと思う。

雪の槍は今まで見たのとはまた違った様相であった。夏は人であふれかえっている山頂も、しんと静まりかえっていた。
新穂から松本までバスに乗ったが、乗客は少なかった。外は雪で、あたたかく乾いた車内からそれを眺めているのは不思議な気分であった。
山岳部に入って、三年が過ぎた。山岳部に限らず、あっという間の三年であった。その間にいろいろなことがあったが、いろいろなことをしたとは言い切れない。果たして、自主的な活動をしてきたのだろうか。

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反省点
行動
 ザイル操作がおろそかになっているところがある。
 トレースもあり、視界も良かったので、ルート迷いはなかった。
生活技術
 朝、出発に時間がかかりすぎている。
食糧
 雑炊(朝)は好評
 ガス缶は大を0.8ほど消費
装備
 赤布はもっと必要

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