2003年度春山合宿報告1   2003年度春山合宿報告2

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2003年度春山合宿2
南岳西尾根


 2004年3月19〜23日(実働5日)
 CL船越 大山(4年)


 山岳部生活4年間の集大成といえば、4年生最後の春休みを利用した卒業記念山行であるが、私が見事に留年を決めてしまったためにO山独りの卒業となった。最後ならば大きな山行をしようと考えていたのであるが、お互い2月は忙しくなかなか思うように練習が出来なかったため、短くても技術的・体力的にやりがいのあるルート、槍ヶ岳に登れるルート(4年間一度も登ったことがない)をということで、南岳西尾根に決まった。ここは2年前の冬に行こうとして諦めたところという経緯があるため、資料等はすぐに集めることが出来た。問題は、卒論のために(といっても卒論は出せなかったのだが)夏からの山行日数が少なく体力が十分かどうか不安であったが、ボッカのタイムが昨年とあまり変わっていなかったので大丈夫だろうと考えた。それにしても、毎回、出発当日に嗜好品の買出し→アイゼンの爪研ぎ→パッキングが終わるという一連の過程は4年目であっても相変わらずであった。

19(金)晴れ
ここ数日、好天が続いたため雪がしまっていて歩き易そうである。駐車場にてお互いの成功を期して高田・松岡組と別れた。白出小屋までは順調に進むが、樹林帯の斜面をずっと歩いたため時間がかかる。ここは蒲田川沿いに下りて歩いたほうが良さそうだ。それにしても天気が良く、青空がまぶしい。
途中、谷のデブリに驚いたり、滝谷の岩の険しさに憧れたりしながら槍平小屋に到着。西尾根取り付きの偵察に行く。沢を渡り尾根基部を探索するが赤旗などの目印はなく、その夜のテントの中で思案に暮れたが、適当に見当をつけて登ることにした。

7:45新穂高温泉出発→8:45穂高平小屋9:00→9:50白出小屋10:00→12:45滝谷避難小屋→14:30槍平小屋TS、西尾根取り付き偵察

20(土)曇りのち晴れ
 樹林帯の急な斜面を1時間半ほど登ると、テントが一張りほど張れそうなちょっとしたピークがあった。デポに使ったであろう空き缶を見つけ、ルートがあっていることが分かり安心した。雪はふかふかで足をとられやすい。そこから1時間ほど斜面を登ると、木のまばらな急な雪壁となり、ザイルを出してスタカットで登る。デルタ状岩壁(と思われる)基部まで5ピッチほど。デルタ状岩壁は氷に覆われており、壁の左端の凹角状になっているところを登ったが、残地ハーケンなどなく今にも抜けそうなブッシュでランナーを取りながらのいやらしい登攀だった。リードのO山が大苦戦しているのは分かるのだが、ビレイしながら寒さと眠たさのために何度もあくびが出てしょうがない。O山とザイルを組んでから4年間、ずっとこんな調子だったとしばし思い出にふける。
登ったあとも急な雪壁が続いたので、疲れと滑落したときの怖さを考えて全てスタカットしたが時間がかかって仕方がない。ふくらはぎが痛く、疲れきったところで広い平らな場所に着きテントサイトとした。晴れて来たため右手に滝谷の険峻な岩壁、上方にマッチ箱が望めた。
 
4:00起床、5:22出発→7:50デルタ状岩壁下の雪壁取り付き8:20→14:00テントサイト(2700m付近?)、偵察

21(日)晴れ
 ザイルを出して出発すると、すぐにマッチ箱に到着する。本来なら岩の上を通過するのが緊張するところであるが、雪が少なく夏道のルートが分かったので、岩の基部を捲いて通過した。技術的には何ら問題ない。細いナイフリッジをスタカットで進み、南西尾根とのジャンクションを越えると南岳に着く。そこから槍までが近いように見えて遠かった。とにかく天気が良く快適な1日であった。 

4:00起床、6:05出発→10:55南岳小屋11:15→15:30槍の肩TS

22(月)雪のち吹雪
 槍ヶ岳山頂へは所々出ている鎖をつかみながら急な雪壁を登る。氷が堅く登りにくい。4年間憧れ続けた山頂に到着したが、天気が悪いため眺望が利かないので写真を撮ってさっさと下る。4回ほど懸垂下降して基部に下りた。
テントを撤収し出発する頃には雪が激しくなり、千丈沢乗越までのルートは視界が良くない。果てしない急な斜面にふくらはぎが痛いのと怖いのとで、立ち止まっては独り言のようにぶつくさ文句を言いながら後ろ向きで下る。吹雪いてきてさらに視界が悪く、千丈沢乗越から中崎尾根へのルートが分からず迷い、一度は夏道を下ろうとしたが、思い直して右手の尾根上をザイルを出しつつ下る。途中、懸垂支点のハーケンが抜けたり、視界不良になったりしてヒヤッとしたが、何とか中崎尾根から槍平に到着したときは二人とも疲れ果てていて、しばらくテントも立てずにボーっとしていた。夜は成功を祝ってささやかなガス缶パーティーをした。

4:00起床、5:35出発→6:15槍ヶ岳山頂6:30→7:40槍の肩8:30→10:15千丈沢乗越10:05→15:00奥丸山分岐→16:00槍平TS

23(火)晴れ
 滝谷避難小屋からはトレースが蒲田川沿いについていたため、歩きやすくあっという間に下山する。成功して青空の下での下山ほど最高のものはない。
無料の温泉に入り一路、高山へ。駅前の白○屋で飲んだ後、岐阜のOB安倍さんの寮に押しかけ一晩の宿を得た。ありがとうございました。

4:30起床、6:20出発→7:20滝谷避難小屋→9:40白出小屋→10:55新穂高温泉下山

 今回の山行は短い期間ではあったが、好天、吹雪と様々な気象条件の中で活動することが出来、良い経験となった。技術的な問題点であったデルタ状岩壁は、おそらくルートを右の岩稜かもっと左から巻けば簡単であたろうと思われる。資料集めの時点で春(3月)に登られた記録が探せなかったが、冬はもっと雪がついていて違った登り方をするのだろう。計画段階での予想コースタイムよりも大幅に時間がかかったのは、急な雪壁(雪の斜面)の登下降に原因がある。西尾根はほとんどスタカットで登ったが、上級生二人ならばザイルなし、もしくはコンテでも行けそうである。他の記録はほとんどそうしていたであろう。それが出来なかったのは怖かったからというのが率直な理由であるが、それまでの山行で雪壁の急斜面を登るようなルートを経験したことがなかったため、どの程度の斜面ならばザイルなし、もしくはコンテで登れるのかということが現地でとっさに判断できなかった。これから積雪期登山を計画する場合には、行き当たりばったりで山行をきめるのではなく、積雪期で必要な技術とか、経験したことのない地形・自然条件を考えて計画を立て実行することが、山行の幅が広がりクラブのレベルアップにもつながるであろう。(要は今までの自分たちの山行は、人の多く入るやさしい尾根歩きが多かったということ。)とにかく今回の山行は自分たちの実力にあった経験が出来た。
 4年間が終わったとはいえ、社会人になるわけではなく山岳部から去るつもりもないので、今後も後輩に負けないように活動しよう、と考えている。今のところは。 
〔文責:船越〕                                    

反省点
行動
 ・予想タイムよりも時間がかかった。→雪壁のほとんどをスタカットで行動したから。
 ・ルート迷いが多い。西尾根取り付き、デルタ状岩壁、千丈沢乗越など。→ルート研究が足りなかった。
 ・全体的に天候が良かったので、毎日の行動が遅くまで出来た。
生活技術
 ・朝の出発が遅い。
食料・装備
 ・毎回ガスが少ないかもしれない。空焚きできるくらいの量が欲しい。大1、中1を消費。
 ・朝のスパゲティ+スープは多少時間がかかるが、腹に入り易くおいしい。
 ・共同食料として夕食後に飲み物を用意したが、水分補給に良かった。

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